事例紹介

case study

公益社団法人 北海道観光振興機構 様

ニセコエリアにて二次交通DX化を実現し、広域周遊観光を促進!

~バスの動的情報を可視化してGoogle マップ検索にも対応~



倶知安町(雪と陽)
北海道観光の認知度向上と国内・海外観光客の誘致で観光産業の振興と北海道経済の発展に寄与する公益社団法人北海道観光振興機構は、「ニセコエリアにおける二次交通の動的情報可視化とデータの有効活用事業」(以下、「ニセコエリアにおける二次交通事業」)において、ユニ・トランドが事業主体となり企業や大学と共同で組織した「地方創生モビリティコンソーシアム」を公募型プロポーザル方式で選定。二次交通の動的情報の可視化と周遊観光エリアの二次交通DX化に取り組みました。インバウンド(訪日外国人旅行)客の間で人気急上昇中のニセコエリアは寒冷で豪雪地帯のため、
冬季はバスの定時運行が困難になります。乗車予定のバスの現在地や遅延状況、運行中止情報などを地図アプリ上で確認できる仕組みづくりは、観光活性化を図る意味でどうしても必要なものでした。
▶▶▶POINT
  • 北海道の公共交通事情に精通し企画提案内容が最適だったユニ・トランド事業主体のコンソーシアムを公募型プロポーザルで選定
  • Google マップ上でGTFS-JPとGTFS-RTを利用可能にし二次交通の動的情報の可視化を実現
  • 乗降データと観光地情報の一貫した分析による現状把握で周遊観光エリアの二次交通DX化を促進
  • 複数の自治体と民間企業が協力した広域での取り組みが観光客や地域住民に利便性を提供
■事業の目的
二次交通の動的情報可視化と
周遊観光エリアの二次交通DX化にチャレンジ

――貴機構が取り組んだ「ニセコエリアにおける二次交通事業」について概要をお聞かせください。

公益社団法人北海道観光振興機構 事業企画本部 地域観光部 統括部長 武内 源太氏(以下、武内氏):
まず、ニセコエリアとは、北海道央の西部、後志(しりべし)管内のほぼ中央に位置し、国立公園の羊蹄山と国定公園のニセコアンヌプリの山麓にある、倶知安(くっちゃん)町、ニセコ町、蘭越(らんこし)町の3町で構成された地域の
ことです。

世界が注目する高品質のパウダースノーや名湯百選にも選ばれた温泉、観光資源を満喫できる各種のアクティビティなどを求めて、冬季・夏期問わず世界中からインバウンド客が集まるアジア最高の国際リゾートを目指して発展しています。

今回はそのエリアで運行されるバスの“時刻表情報”と“バス停の位置情報”を、国土交通省が定めたバス事業者と経路検索事業者との間でデータの受け渡しをするための「静的バス情報フォーマット」(GTFS-JP)に変換してオープンデータ化することを目的に、2022年7月~2023年3月まで実施したプロジェクトです。GTFS-JPに統一することで、大手プラットフォーマーのGoogle マップや百度地図の上で位置検索をする際に、バス停間の移動ルートやJR駅までの徒歩ルートなどを利用できるようになります。弊機構はそれらのデータを充実させて、プラットフォーマーや国内のアプリ開発ベンダーがそのオープンデータを利用してもらうための基盤整備を行いました。

―― 「ニセコエリアにおける二次交通事業」を実施するに至った経緯についてお聞かせください。

武内氏:実は「ニセコエリアにおける二次交通事業」より以前に、北海道内の二次交通情報をGTFS-JPに統一する
プロジェクトは2段階で進めました。

第1フェーズは、2019年10月から2021年3月まで「令和元年度 二次交通情報発信事業」として実施。
当時未統合だった道内で運行するバスなどの公共交通情報を整備し、インバウンド客が観光される際にストレスを感じることなく移動ルートの検索ができるオープンデータベースを作ることが目的でした。

北海道内には、自治体や企業が運営する路線バス、コミュニティバス、電車、市電、離島を結ぶフェリーなどの二次交通の事業者が100社・団体ほど存在します。当時多くの事業者は、時刻表をExcelや帳票を使い手作業で管理するなどオープンデータ化はされていませんでした。その状態ではエリアの情報が地図アプリの移動検索に表示されないため、迂回したルートが検索されてしまいます。全事業者の時刻表・停留所のデータがきちんとGTFS-JPに整備されていることが重要でした。第1フェーズの事業は、広域データ整備の事業範囲としては日本最大規模となるもので、ほぼ全ての事業者の時刻表、停留所や駅の位置情報をGTFS-JPに整備し、地図アプリでの移動検索を可能にしました。
今回の「ニセコエリアにおける二次交通事業」は、それに続く第2フェーズとなります。

―― 「ニセコエリアにおける二次交通事業」で想定したアウトプットにはどのようなものがあったのでしょうか。

武内氏:主に2つありました。

1つは、二次交通の動的情報の可視化です。
ニセコを訪れるインバウンド客の多くは、スキー場や観光地、市街地への移動にバスを利用されます。このエリアは道内でも寒冷で豪雪地帯のため、冬季はバスの定時運行を維持することが非常に困難になります。そのため、バスの接近や遅延、運行中止などの情報をGoogle マップ上で確認できる仕組みづくりは、利用者の利便性向上を図る意味でどうしても必要でした。それを可能にするのが、GTFS-JPと併せてルート最新情報・車両位置情報・運行情報をリアルタイムに利用するための「動的バス情報フォーマット」(GTFS-RT)の導入です。
倶知安・ニセコ・蘭越の3 町の町営バスと民間のニセコバス株式会社を合せた4事業者が運営するバス事業に道内で初めてGTFS-RTを活用する事で、インバウンド客はもちろん地域住民も将来にわたり利用が可能な交通体系の確立を目指したのです。ニセコエリアを選んだ理由は、この4事業者の関係性が良好でバス路線もある程度連携しているほか、
バスロケーションシステムで位置情報を可視化できればエリアとしてのプレゼンスも向上し、地元の協力も得られやすいと考えたからです。

もう1つは、周遊観光エリアの二次交通DX化です。
第2フェーズは観光庁の観光地域振興課が管轄する「広域周遊観光促進のための観光地域支援事業」(※1)の予算を利用して行われました。これはインバウンドを対象とした事業であり、注目のニセコで広域周遊観光のためのデータ収集を行うことに大きな意味があったのです。GTFS-RT導入によってインバウンド客のOD(出発地と目的地)・乗降客数・
利用区間・遅延状況などのデータをベースに、観光地を適切に周遊いただくための予測をダイナミックに可視化します。また、地域の資源であるバス路線網をインバウンド客も活用しやすくなるよう、地域交通体系の今後を検討する材料にもしようと考えました。

他にも目的がありました。それが、ニセコエリアの中で異なる路線のバスを乗り換えてもワンプライスで移動できる二次交通版「ゾーンプライシング」の可能性を探ることでした。GTFS-JP・GTFS-RTのデータの他に、バス停間の乗降データも取得して、4事業者が運営する路線内でどのようなプライシングやダイヤ編成が可能かを議論しようと考えたのです。

※1:訪日外国人旅行者等の各地域への周遊を促進するため、DMO(観光地域づくり法人)が中心となって行う、地域の関係者が連携して観光客の来訪・滞在促進を図る取組に対して支援する事業

■審査のポイント
地方公共交通のあり方や将来性について
コンサルティング的な視点での提言を期待

―― 第2フェーズの「ニセコエリアにおける二次交通事業」ではユニ・トランドが事業主体となり、グループ会社の
株式会社ユニリタ、北海道のIT事業会社、大手交通コンテンツプロバイダ、大手旅行会社、地元の国立大学と共同で
地方創生モビリティコンソーシアムを設立。公募型プロポーザル方式で正式契約後は幹事会社を務めました。
審査において特に重視したポイントをお聞かせください。

武内氏:特に次の2点に注目しました。

第1に、企画提案内容が最も適切だったことです。ユニ・トランドが幹事を務める地方創生モビリティコンソーシアムは、第1フェーズの「令和元年度 二次交通情報発信事業」でも公募型プロポーザルで選任され、国内最大規模の
広域データ整備事業を我々と二人三脚で完遂した実績を持っています。コンソーシアムの幹事会社として優れた組織力とリーダーシップを持つサービスベンダーだと実感していました。その経験もあり、第2フェーズの提案内容もニセコエリアの二次交通の課題や今後の方向性などが公募に応じたコンソーシアムの中では最も具体的かつ実行可能なもので、地方公共交通のあり方や将来性をコンサルティング的な視点で提言いただきながら事業を進められると考えました。

第2に、北海道の公共交通事情に精通していることです。公共交通に関する様々な先進事例を含めた知識はもちろんのこと、特にユニ・トランドの担当者が道内の交通事業者とのチャンネルを豊富に持ち、その関係性も良好で、第1フェーズでも多くの場面で助けられました。今回もこのコンソーシアムの知識や人脈を活かしてプロジェクトを推進できれば大きな収穫が得られると思ったのです。

■実施後の効果
乗降データと観光地情報の一貫した分析で
現状把握を行い観光活性化につなげる

―― 「ニセコエリアにおける二次交通事業」実施後の評価をお聞かせください。

武内氏:成果として、まず目標としていた二次交通の動的情報の可視化が実現しました。

地方創生モビリティコンソーシアムが実施した具体的な内容は、バス全車両へのGPS車載器・乗降分析装置の設置と
データ収集、GTFS-JP・GTFS-RTの整備、Google マップ・百度地図へのデータ提供と調整のほか、実証実験や、観光客及び地域住民のバス利用実態調査とデータ分析、複数回のワークショップなど広範囲にわたります。特にユニ・トランドは第1フェーズから約100事業者のGTFS-JP情報を維持・更新し続ける作業に協力いただいており、観光客や地域住民に対して地図アプリから二次交通の情報を提供できるようになりました。続く第2フェーズにもその実績が活かされ、道内で初めて導入したGTFS-RTについても、全ての二次交通に適用することを目標に条件を整備しながら順次進めているところです。現在はGoogle マップでGTFS-JPとGTFS-RTの両方が利用できる状態になっています。

一方、周遊観光エリアの二次交通DX化についても、ユニ・トランドのバスロケーションシステムの活用で乗降データと観光地情報の一貫した分析による現状把握が可能になり、今後のエリア内最適時刻表の作成や観光活性化における可能性が見えてきました。また、実証実験によるアンケートでは、特にインバウンド客から有料のバス利用時の現金による料金支払に時間がかかってしまうことが明らかとなりました。そのためニセコバスではキャッシュレス決済の導入に向けた
取り組みを進めている状況です。

さらに、ニセコエリアで複数の自治体と民間企業が協力し広域での取り組みが成功した点にも注目しています。
GTFS-RTによる二次交通の動的情報の可視化も、周遊観光エリアの二次交通DX化も、自治体や企業が単独でデータを整備しても大きなメリットにはつながりません。地方創生モビリティコンソーシアムの尽力によって官民で運営する二次交通を連携し、点や線ではなく面で観光客や地域住民に利便性を提供できたことに大きな意味があると思っています。

加えて、今回は観光地域支援事業の比較的大きな予算で公共交通網のICTサービス導入への可能性を示した点も価値があったのではないかと考えています。北海道 観光局観光振興課や交通政策局交通企画課、国土交通省 北海道運輸局
自動車交通部などのステークホルダにも随時情報を共有し、限られた予算の中、可能な限りのご支援をいただきました。

なお「ニセコエリアにおける二次交通事業」を取り組むにあたり、当初のアウトカムでは、
①エリア内バス乗降者数、2020 年度比 24% 増加、②ゾーン料金導入に向けた提案数を5 件とする
という目標を設けましたが、それらのKPIは共に達成。2022年12月から2023年2月の予想でバス乗降者数2万9,000人を
目標にしていましたが、実績値では24万1,906人となり、コロナ禍明けとはいえ8倍以上の数値となりました。事業実施の効果は大きかったと分析しています。

第2フェーズが終了した後も、導入したユニ・トランドのバスロケーションシステムは継続して活用し、分析につなげたいと願っています。

<観光地アクセス分析の例:3町の評価>

■今後の施策と総評
価値観を共有する複数の自治体と民間事業者を対象に
新たな事業を展開予定

―― 今後取り組む予定の新たな事業や施策についてお聞かせください。

武内氏:弊機構としては、ニセコ以外の地域においても二次交通の動的情報の可視化と周遊観光エリアの二次交通DX化を進めていく予定です。地域選定の条件も、ニセコエリアと同様に複数の自治体と民間事業者が含まれ、価値観を共有できる形で多角的に議論を進めながら行いたいと思っています。

―― 最後に一連の事業を振り返り、ユニ・トランドの総合的な評価をお聞かせください。

武内氏:第1フェーズからユニ・トランドは信頼できるパートナーとして考えていました。バスロケーションシステムの技術を持つベンダーはいくつも存在しますが、ユニ・トランドは地域公共交通に関する知見や経験の豊富さ、データ解析力、営業担当者の人脈づくりや提案力の高さなどがトータルに優秀で、事業を成功裏に導いてくれました。
また、Google マップや百度地図に情報を連携する際の意思決定にユニ・トランドの助言や方向性のアドバイスが大変参考になり、北海道での最適解を作るという意味でもユニ・トランドは大いに役に立ってくれました。

北海道は面積も広大ですが二次交通事業者数も他県に比べて格段に多く、その中で各事業者と深い関係を構築して二次交通の動的情報の可視化を進められることがユニ・トランドの強みだと思います。
今後もその知見を北海道の観光振興に役立てていただきたいと願っています。