事例紹介

case study

公益社団法人 岩手県バス協会 様

盛岡市内の路線バスにデジタルサイネージシステムを採用

各社のGTFSデータを活用して管理負担やコスト負担を
大幅に削減し多言語対応も実現


公益社団法人岩手県バス協会(以下、バス協会)は、岩手県盛岡市内を運行する路線バスで約20年以上活用してきたバスロケーションシステムの老朽化や機能不足、運用負荷の軽減に対応するため、最新のシステムへの更新を決断しました。今回は、複数の路線バス事業者が作成したバス運行情報を統合し案内表示できるシステムを導入することを目的に、プロポーザル方式(企画競争入札)による提案を受付け審査した結果、ユニ・トランドの「デジタルサイネージシステム」を採用することとなりました。表示できる情報量の増加と視認性の向上、保守・管理負担の軽減、そして最近急速に増加している海外からの旅行者へのサービス支援や利便性向上にも寄与しています。
▶▶▶POINT
  • 表示器の表示量が4件から最大7件に拡大し利用者の利便性が大幅に向上
  • バス事業者各社がGTFSデータを管理することでバス協会の管理負担やコスト負担を軽減
  • サイネージ配信システムの導入により関係者間での画面情報の共有が実現し管理作業の効率性が向上
  • 増加するインバウンドに対応するため長年の懸案だった多言語対応が実現
■導入前の問題
旧システムの老朽化対策と運用負荷の軽減

―― 岩手県バス協会様が取り組んだ「バス情報共通案内システム整備事業」の概要についてお聞かせください。

バス協会 専務理事 菅原克也氏 (以下、菅原氏):盛岡市では鉄道、路線バス、タクシーなどの公共交通手段を適切に選択して組み合わせ、市民、交通事業者、行政などが連携して地域のニーズに合わせた効率的で持続可能な地域公共交通網の形成を目的として、2019年に「盛岡市地域公共交通網形成計画」を策定しました。その基本方針のひとつに
「誰もが利用しやすい交通環境の構築」が挙げられており、情報の伝え方の改善・充実に取り組んでいます。具体的にはバス協会と盛岡市内を運行する路線バス事業者、関係機関とで協議し、新たなバスロケーションシステムへの更新・整備を行い、わかりやすく便利な案内表示にすることです。

バス協会はその実施主体として、盛岡市内で「バス情報共通案内システム整備事業」のプロジェクトを開始。
路線バス事業者と調整を図りながら、2022年3月、最初の1台として旧バスセンター前のバス停にデジタルサイネージを設置しました。次は、2022年10月に開業した新「盛岡バスセンター」の待合室に、バスの行先や発車時刻をデジタルで表示する総合案内機器(デジタルサイネージ)を設置しました。また2023年3月にはJR盛岡駅東口バスロータリーをはじめとして、市内で乗換え地点となる主要なバス停数カ所にもデジタルサイネージを設置し、時刻表やリアルタイムの運行情報などをバス利用者に提供できるよう整備を行いました。

―― 旧システムの問題点についてお聞かせください。

菅原氏:問題は主に2つありました。

1つはシステムの老朽化対策です。

盛岡市では1990年代後半から通勤・通学の時間帯に発生する市内の慢性的な交通渋滞に悩まされてきました。それを解決するために取り組んだのが「オムニバスタウン計画」(以下、オムニバスタウン事業)です。
オムニバスタウン事業は、交通渋滞、大気汚染、自動車事故といった都市が直面する諸問題を、地域のバス交通を活用して解決する取組みとして、1997年に旧運輸省、旧建設省、警察庁の三省庁で創設した施策です。最終的に全国で14都市が取組み地域の指定を受けましたが、盛岡市もその一つとして、2001年度~2003年度にバスロケーションシステム
(旧バスロケ)等を導入する事業を展開しました。しかし、オムニバスタウン事業で導入した旧バスロケは稼働開始から20年以上が経過し、老朽化による故障の頻発や、表示できる情報量が限られるなど、近年の一般的な情報通信技術から見ると機能が不足していました。

問題のもう1つは、保守・管理負担の軽減です。

旧バスロケはオンライン化が不十分だったため、ダイヤ改正の度に時刻表などのデータをバス協会のサーバに手入力したり、各バス停の表示器に手作業でインストールしたりする等の手間があり、定期的なメンテナンスも含め、バス協会が担う作業負担や、その作業を一部業者に委託するコスト負担が問題になっていました。また、旧バスロケでは、一運行ごとに車載器を操作して次の運行情報を設定し、無線通信により接近を知らせる仕様であったため、バスの運転手さんにも
負担を強いていました。もし設定忘れ等があれば接近表示が反映されないなど、バスの利用者を混乱させてしまう可能性もありました。

■問題解決の目標
各路線バス事業者のGTFSデータを統合し
手間なく正確に連携できる仕組みの導入を目指す

―― どのような解決策を検討したのでしょうか。

菅原氏:まずは、ダイヤ改正時等の作業負担を軽減し、更新するシステムの費用もできるだけ安価にすること。そして公共交通機関の時刻表や地理的情報に使用される共通形式を定義したGTFS(General Transit Feed Specification)データを利用することで、各路線バス事業者の時刻表情報やバスの位置情報を統合し、手間なく正確に案内表示できるシステムを導入したいと考えました。また、海外からの旅行者が増加していることもあり、多言語に対応したデジタルサイネージに機能強化することも目指しました。

そのため、盛岡市内の主な路線バスを運行する3社と、盛岡バスセンターに乗り入れる長距離バス運行会社2社を加えた合計5社を対象事業者とし、これらのバス運行情報をデジタルサイネージに一括表示させることとしました。

―― ユニ・トランドのデジタルサイネージシステムを選定したポイントをお聞かせください。

菅原氏:業者選定はプロポーザル方式による提案受付を実施し、寄せられた複数の提案の中から2021年12月に
ユニ・トランドの企画提案を選定しました。バス協会が理想とするGTFS-JP(時刻表などの静的情報)やGTFS-RT(運行状況などの動的情報)を併用した提案内容の的確さや、開発~運用開始までの導入期間の短さ、導入費用の競争力の高さなどをトータルに判断した結果です。

また、ユニ・トランドは他の地域の公共交通システム導入事例でも成功を収めているとお聞きし、技術的・経験的な知見の深さが他社より優れていたことも大きな判断材料となりました。

   

■導入後の効果
表示可能な情報量の拡大と視認性の向上で利用者の利便性が向上

―― プロジェクトはどのように進められたのでしょうか。

菅原氏:概ね3段階で進めました。オムニバスタウン事業で導入された旧バスロケは2022年3月で運用を終了し、それと入れ替わる形で2022年3月4日から第1期の運用を開始。路線バス事業者3社のGTFS-JP、GTFS-RTを統合し、旧バスセンター前のバス停にデジタルサイネージを1台設置したのが最初です。

2022年9月29日からの第2期では、新設した盛岡バスセンターの待合室に総合案内のデジタルサイネージを設置。
発車番線ごとに表示するシステムを構築しました。

2023年3月3日からの第3期は、松園バスターミナルほか市内15箇所のバス停にデジタルサイネージを設置。
また、JR盛岡駅東口バスロータリーにも総合案内のデジタルサイネージを設置して、JR盛岡駅東口バス乗り場の全ての発車番線情報を集約表示しています。2023年8月現在、設置総数は18台となっています。

―― バス情報共通案内システム運用開始後の効果や評価の声などについてお聞かせください。

菅原氏:特に強調したいのは次の3点です。

1つ目は、情報量の増加と視認性の向上です。

旧バスロケでは一度に4件しか表示できず、ユーザに提供できる情報量が十分ではありませんでした。現在は最大7件表示できるようになりました。またバスの接近情報として、9つ前のバス停をバスが通過したタイミングと、1つ前のバス停を通過したタイミングで表示及びバイリンガル対応した音声案内が流れるようになっています。
また、バス協会や路線バス事業者が希望する表示パターンやデザインで表現できるようになりました。バス事業者別の
お知らせなどもテロップで旧バスロケより簡単に流せるようになり、ユーザにより多くの情報が提供できるようになったことも大きな進化です。カラー表示になり、明るく見やすくなったとのユーザの声が聞かれるようになりました。
さらに、JR盛岡駅東口ロータリーでも設置した大型サイネージで多くのバス利用者が乗り場を確認するようになり、利用が日常的に定着していることを実感します。

2つ目は、保守・管理負担の軽減。

旧バスロケはバス協会で管理する方式でしたが、現在は路線バス事業者各社がGTFSデータを管理するようになり、
バス協会で毎日行っていた維持管理作業の負担や、業者に外注していたコスト負担も格段に削減されました。オンライン化によって、更新されたGTFS情報がリアルタイムで各サイネージに反映されるほか、一運行ごとに車載器を操作する必要はなくなったため、運転手さんの負担も軽減しています。
また、デジタルサイネージへのコンテンツ配信を実現するクラウド型サイネージ配信システム「PICLES」(株式会社ビーティス製)を活用したことで、全てのデジタルサイネージを簡単に一括管理できるようになりました。現在何が表示されているか、時刻変更や運休時の表示内容・デザインをどのように修正すべきかを、バス協会や各バス事業者、ユニ・トランドサポートの管理画面上でリアルタイムに共有できるので、作業の効率性や利便性が大幅に向上しています。

3つ目は、インバウンドへの対応。

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、世界中の記者などの情報を元にその年に行くべき旅行先として世界各地の都市を紹介していますが、2023年1月に発表した「2023年に行くべき52か所」に盛岡市が選ばれ、ロンドンに続いて2番目に紹介されるなど、海外からの旅行者が以前よりも増えている状況です。デジタルサイネージになり、英語での表示や音声案内も流せるようになり、盛岡市を訪れる海外のお客様に安心してバスをご利用いただけるようになりました。多言語対応が積年の懸案だったので、ようやく実現できたことを非常に嬉しく思っています。

「バス情報共通案内システム」で岩手県バス協会が導入したデジタルサイネージシステムの概要
  • QR接近情報
■今後の見通し
デジタルサイネージを維持・管理し利用者の期待に応える
プロジェクトは今も検討継続

―― 今後の運用計画についてお聞かせください。

菅原氏:プロジェクトの計画では、今後更に2台のデジタルサイネージをバス停に設置する予定です。また、デジタルサイネージを設置していないバス停においては、QRコードをスマートフォンで読み取ることで、デジタルサイネージと
同様の情報を表示するサービスを提供することも可能になったので、どのような形で活用していくかについて関係者間で検討しなければならないと考えています。

―― 最後に今回のプロジェクトを振り返りご感想をお聞かせください。

菅原氏:第3期ではバス事業者間の調整に時間がかかり、作業開始のタイミングが大幅に遅れてしまいましたが、
ユニ・トランド担当者様のご尽力によって迅速に導入作業を進めていただいた結果、年度内に無事運用を開始できました。サイネージの設置作業が冬期間となったため路面の凍結や降雪などに見舞われたり、JR盛岡駅敷地内に光回線の敷設ができず急遽モバイル回線に切り替えたり、悪条件が重なったにも関わらず柔軟にご対応いただいたことを非常に感謝しています。

ただしこれがゴールではありません。デジタルサイネージの機能を万全に維持・管理し、バス利用者の期待に応え続けるという部分でもプロジェクトは今も継続しています。長いお付き合いになるかと思いますが、これからも広くご支援いただけるようよろしくお願いいたします。

    JR盛岡駅東口バスロータリーに設置されたデジタルサイネージ