事例紹介

case study

石川県小松市様/日野自動車株式会社様

バス業界初!小松市が路線バスの乗降データ分析に挑戦 
日野自動車とユニリタグループが協力し地域公共交通の活性化に向けた実証実験を支援

石川県小松市(以下、小松市)は、市内の路線バス及びコミュニティバスの運用において、日野自動車株式会社(以下、日野自動車)、株式会社ユニリタ(以下、ユニリタ)、及び株式会社ユニ・トランド(以下、ユニ・トランド)と連携し、バス車内に設置したデータ収集システムの運用、ならびに可視化したデータを分析する実証実験を実施しました。ユニ・トランドが提供する可視化分析基盤を活用し、系統・便・バス停ごとの詳細データを効率的に収集、可視化したほか、ユニリタのデータサイエンティストがオープンデータを組み合わせながら課題抽出することで、既存路線の再編検討に大きく貢献しました。
▶▶▶POINT
  • 運行情報のデータ化・見える化・分析をワンストップで実現し実証実験のコストを抑制
  • 系統・便・バス停ごとの細かいデータを集計し既存路線の再編に向けた検討に貢献
  • OD推定(※1)を移動特性の見える化と施策の効果検証に利用し交通再編の効率化を促進 
■導入前の課題
路線バスの乗降データを効率的かつ詳細に取得し分析することが課題

ー小松市様が日野自動車様と取り組まれている実証実験の概要についてお聞かせください。

小松市:日野自動車さんとは2019年7月22日に「地域公共交通を活かした魅力あるまちづくりに関する協定」を締結し、安全・安心・利便性の高い地域公共交通の再構築により、新しい時代に対応したモビリティサービスの社会実装、都市交通機能の強化に努めてきました。具体的には、2019年度から地域と連携した乗合ワゴンを運行し、買い物、通勤、通学、通院など目的ごとのモビリティサービスの提供やその自主運行化を支援しています。一方、地元住民や観光客にとって重要な交通手段である既存の路線バスは、効果的なダイヤ編成となっているか、地域で重要な施設にアクセスしやすくなっているかなどの検証が重要になっています。この実証実験は、路線バスなどの公共交通における現状把握の実施方法や、着手の手順、保有するデータの活用方法などについて、バス事業者などの手助けとなるサービスの有効性を検証する目的を持っています。

日野自動車:全国の地方都市では、少子高齢化や人口減少、利用者の減少に伴う公共交通の危機的な状況など、抱える課題は共通しています。同時に、自家用車の利用が不可欠な地域において、運転免許証自主返納後に頼ることとなる路線バスなどの公共交通が使いやすく維持されるか、不安を覚える高齢者も増えています。このような社会課題をいかに解決すべきかについて、小松市様と相談しながら実証実験を進めてきました。

小松市:また、2024年春に北陸新幹線の金沢―敦賀間開業を控え、こまつ版MaaS(Mobility as a Service)の整備も進めています。新幹線小松駅や小松空港を活用した南加賀における通勤・通学・ビジネス・観光・研修等の拠点機能向上を図るため「こまつ地域交通プラン」を推進中です。それをより効果的に実現するための路線バスの利便性の向上、効率化も大きなテーマとなっています。

ー実証実験においてはどのようなことが課題になったのでしょうか。

小松市:データを効率的に取得し、それを分析することが大きな課題でした。高齢化の進展と市民生活の活性化を公共交通の面からカバーしていくことも重要ですが、北陸新幹線開通に伴って増える来訪者をいかにして観光促進につなげるかを考える必要もあります。そのためには、既存の路線バスをどのように活用すべきかを改めて検討し、場合によっては路線変更や統廃合も実施しなければなりません。しかし、これまでは乗降者数などの詳しいデータが揃っておらず、経験と勘で決めるしかなかったのが実状でした。バス事業者が収集したデータはありましたが、特定の路線や便に偏った乗降調査を1年間に20日間のみ収集するなど、利用総数の粗いデータしかなかったので、それを分析に活用するにはかなり難しい状況だったのです。少なくとも1年間に3ヶ月や6ヶ月といった中・長期でのデータ取得が必要でしたが、それを実施する予算が不足していたのも大きな悩みでした。

■選定の決め手
運行情報のデータ化・見える化・分析をワンストップで実現しコストを抑制

ーデータ収集と分析にユニ・トランドの技術を活用された理由についてお聞かせください。

日野自動車:ユニ・トランドの「持続可能な運行情報の可視化分析基盤」(以下、可視化分析基盤)には以前から注目しており、弊社から小松市様に提案しました。可視化分析基盤は、1)車載器および乗降カメラセンサーによるバスの運行情報のデータ化、2)クラウドサービス「MANALYZE」(※2)によるツール状況の見える化、3)ユニリタのデータサイエンティストによる新たな考察などがワンストップで利用できるため、データ収集後の分析もコストを抑えながら継続的に行えると判断したのです。

小松市:実証実験では系統、便、バス停ごとのデータをセンサーで自動取得でき、かつそのデータをダウンロードして可視化できることも魅力でした。バス事業者や運転手にも負担をかけない仕組みだったので、実証実験もスムーズに進めることができました。

■導入後の効果
OD推定を地図上に可視化することで誰でも分かり易く分析を実施

ー可視化分析基盤は実証実験の中でどのように活用されたのでしょうか。

小松市:実証実験では、最初にコミュニティバスの一部にセンサーを取り付けてデータを収集しました。それが成功したことで、小松市内を走る一般路線バスの一部にも導入しデータを収集することになったのです。その次のフェーズでは、異なる系統の路線バスにセンサーを取り付けてデータを取得し、可視化・分析を実施しています。

ーデータ収集と可視化の効果についてお聞かせください。

小松市:これまでは粗いデータしか揃っていませんでしたが、可視化分析基盤の導入によって、系統ごと、便ごと、バス停ごとの細かいデータを集計することができ、既存路線の再編の検討にとても役立つと確信しました。誰も利用していないと思っていたバス停が想定以上に利用されていたり、反対に人気路線だと思っていた系統があまり利用されていなかったり、経験値があるが故の思い込みが払拭できたことも大変有意義でした。

ー十分なデータを収集して可視化できると信憑性も高まり、
計画策定や効果測定にも活用しやすくなります。

小松市:その通りです。こうした詳細なデータに基づく可視化されたレポートがあると、地域の市民や市議会への説明の際にも活用できると考えています。特に路線が再編される地域は住民への説明責任が伴います。漠然とした経験値で対話を行っても水掛け論になってしまいますが、きちんとしたデータが可視化されていれば論理的に議論を進めることができます。また、単に路線を廃止するという結論だけではなく、異なる新たな交通モードの検討などにも可能性が広がります。
日野自動車:公共交通のような領域は、快適に暮らしたい利用者、安定的にサービス提供をしたい事業者、市民の暮らしを公平に支えたい自治体など、それぞれの想いがある中で、極力最適な答えを導く必要があり、コンセンサスづくりが最も重要です。そのためには今回のように客観的に事実を示す「基礎データ」は大変有効だと考えています。

ーデータサイエンティストによる分析レポートはいかがでしたでしょうか。

小松市:センサーから得られたデータをオープンデータと組み合わせたり、分析方法を変えたりすることで、予想以上の分析が可能になることに驚きました。例えば、各バス停の乗降数のデータをOD推定し、それを地図上に可視化してもらうことで、誰でも分かり易く分析できるようになります。便ごとに今ある系統を適切に割り当てたり、新たな系統を立案したりする際にも役立つほか、OD推定により移動特性が見える化できると、利用促進のキャンペーンや施策の効果検証などにも利用しやすくなり、交通再編がますます効率化できると考えています。

ユニリタ:弊社では小松市様の所有している各種データとオープンデータを組み合わせながら課題抽出を行いました。データ解析から改善ポイントの立案、及びその結果をもたらした要因分析まで実施し、初めて効果的な施策立案が可能になります。施策前後のデータ収集とレポートを比べることで効果検証が可能になり、単発ではない継続的な施策を実施し続けることができるのです。

<データサイエンティストによる分析、提案例>

各バス事業者様の課題やテーマに沿った上で、路線バスの乗降データをより深く分析した一例となります。
地域住民の「生活の足」確保、「利便性」向上に向けた課題抽出や要因分析を行います。

ブルーこまち(9:00発 市役所前先行 市民センター経由/休日)
ブルーこまち(9:00発 市役所前先行 市民センター経由/休日

ブルーこまち(10:25 園町先行 市民センター経由/平日)

<乗降データからのOD推定>
乗降データから区間ごとのOD推定を全便ごとに行います。上の図でも同じブルーこまちでも9時の便と10時の便で移動特性が全く違うことがみてとれます。新しい系統設定や便ごとに適正な系統を割り当てる際に役立ちます。

■今後の見込み
今後もデータを分析し路線バスの利便性の向上と効率化を推進

ー今後の展望をお教えください。

小松市:今回の分析結果をもとに、地域に丁寧に説明しながら、路線バスの利便性の向上と効率化を推進したいと考えています。また、小松市の特徴的な取り組みの1つとして、高齢者や学生を対象に市内の路線バス及びコミュニティバスが定額で乗り放題となる「らく賃パスポート」があります。現在、らく賃パスポートは紙媒体であり、利用実態が把握できませんが、今後、らく賃パスポートにQRコードを印字するなど、利用者のODデータを取得して、路線再編や料金体系見直しなどに活かせるような検討も視野に入れています。

日野自動車:地域には地域固有の認識や暗黙知のようなものがあり、変化を無意識に敬遠してしまうこともあると思います。だからこそ、弊社は第三者の立場で客観的なデータを基にしながら、最適な答えを導き出せるよう貢献したいと考えています。

ユニリタ:今後は、デマンドバス(利用者の事前予約によりルートやスケジュールを可変させて運行する地域公共交通)や自動運転コミューターの導入など新たな交通モードの検討においてもデータ分析が不可欠です。新交通モードが既存路線に与える影響もデータ化することで、共存の可能性も見えてきます。これからもより深い交通再編に活かせる分析で小松市様を支援いたします。

※1:OD推定:鉄道など公共交通機関の乗降人員をOrigin(出発地)とDestination(目的地)でデータ収集し、地域やゾーンごとの発生交通量を推定する手法。
※2:MANALYZE (マナライズ):地図インターフェイスによる乗降数の可視化と、乗降数のサマリーレポート出力(Excel)の機能を有したユニリタのサービス。